文化の台湾 - 2021-04-23_台湾の伝統的な人形劇・布袋戯(ポテヒ)

  • 23 April, 2021
文化の台湾
霹靂布袋戲(ピーリーポテヒ)の代表的キャラクター「素還真」は2020年にRTIにゲスト出演したことも。(写真:RTI)

今月4月3日から、日本のTOKYO MXなどで、日台合作テレビ人形劇「Thunderbolt Fantasy(サンダーボルトファンタジー)」の最新シリーズの放送が始まりました。

この「Thunderbolt Fantasy」は、台湾の伝統的な人形劇・布袋戯(ポテヒ)を現代的にアレンジした「武侠ファンタジー」作品で、今作は第3期目となります。ご覧になっている方もいるかもしれませんね。

この「Thunderbolt Fantasy」の原案・脚本を手掛けたのは、アニメ「魔法少女まどか☆マギカ」などを手掛けた脚本家の虚淵玄氏。

彼が2014年に自身の作品「Fate/Zero」の台湾版出版に伴うサイン会で台湾を訪れた際に、台湾の出版社のスタッフから、会場付近で開催されていた「霹靂布袋戯(ピーリーポテヒ)」の展覧イベントへ案内された際に、強烈な刺激を受け、これが日本では一部にしか知られていないことに「もったいない」と感じて、なんとか日本に紹介できないかと各方面へ働きかけたのがきっかけとなり、その後、キャラクターデザインなどは日本側で手掛け、人形の制作や撮影などは台湾のポテヒ制作会社「霹靂國際多媒體股份有限公司(霹靂社)」が担当する形で、日台合作のテレビ人形劇が作られています。

ところで、この「布袋戯(ポテヒ)」とは一体どういうものなのでしょうか。

「布袋戯(ポテヒ)」は、別名「掌中戲」とも呼ばれ、手で動かす人形劇のこと。

言い伝えや資料などによると、およそ17世紀に中国大陸の福建省泉州で誕生したとされています。

さかのぼること17世紀、中国大陸福建省の泉州に梁炳麟という人物がいました。彼は知識も経験も非常に豊富でしたが、いつも官僚登用試験になると落第していました。

ある年、梁炳麟が再び官僚登用試験を受けようとしたとき、「九鯉湖仙公廟という廟はよく信者の夢の中で人生の向かう先を導いてくれる」という噂を知り、仙公廟で神のお導きを求めました。

するとその夜、梁炳麟の夢の中に、「福」、「禄」、「壽」の3人の神様や、「麻姑」と呼ばれる道教の有名な仙女、学問の守護神である「魁星」といった神様たちが現れ祝賀を行っていました。また翌日、おみくじを引くと、「名声は掌の上、栄光と富はもう目の前」とあり、梁炳麟はこれは間違いなく合格すると大喜び!…ところが今回も落第でした。

その後、梁炳麟は故郷に帰り、私塾の講師で生計を立てていました。少し空いた時間に、彼はよく隣の操り人形劇を観に行き、十数本の線で巧妙に人形を操る様子に、感動するとともに、何年もの努力が必要であるということを目の当たりにしました。

ある時、梁炳麟がいつものように操り人形劇を観ていると、突然、「人形を小さくして掌で操作すればもっと精巧な動きになる」とインスピレーションが沸いてきました。

そこで梁炳麟は、小型の人形を作り、操作の練習を重ねると、操り人形よりもどんどんと自然な動きになっていきました。

そして民間に伝わる物語や言い伝え、噂などを歴史風に描いた「稗官野史」と呼ばれる小説を参考に自分で脚本を作り、お芝居を通して自分の目標を達成できない嘆きと無力感を表現し、この機会を利用して自身の詩文の才能を発揮し、試験官の無能さや、見る目のなさを風刺。

梁炳麟が正式に公演を始めると、その語り、優雅な詩と歌、それと合わさった絶妙な操作テクニックで、すぐに泉州中で話題となり、みんなが彼に公演をしてもらいたいと引っ張りだこになりました。

それが布袋戲(ポテヒ)の起源だと言われています。

ちなみに梁炳麟は、ある時、官僚登用試験の最終試験で第一等の成績を修めたキャラクターを演じたときに、九鯉湖仙公が夢の中で告げた「名声は掌の上」とは、試験の合格のことではなく、今、目の前にある“掌の上で操る世界”のこと、つまりこの「布袋戲(ポテヒ)」を指していたことに気づいたんだそうです。

「布袋戲(ポテヒ)」は、廟のような舞台を設置し、人形は、木製の頭部と手足、そして布製の身体となっていて、手袋上になった体の部分に手を入れて操ります。

“布で作られた袋状の人形”ということから「布袋戲(ポテヒ))」という名前となったと言われています。

この布袋戲(ポテヒ)は中国大陸の福建省の漳州、泉州、潮州に広まり、それが台湾にも渡ってきました。

台湾には主に泉州から伝わってきたとされています。

当初は中国大陸から入ってきた伝統的な内容でしたが、閩南布袋戲の音楽や歌は、優雅で繊細ではあるものの、リズムが遅く、強い訛りや文学的なセリフのスタイルは少し退屈で、台湾では受け入れられにくいということや、中国大陸から来た多くの劇団は長く台湾で公演を行うため、時には裏方の人が亡くなったりした際に現地で人材を探すのは容易ではなく、台湾で最も一般的な「北管」と呼ばれる台湾漢民族の伝統的な戯曲が使われるようになりました。

この「北管」の楽器は主に打楽器で、曲調も高揚感があり、現在でも廟のお祭りや結婚式などのお祝い事で耳にする音楽です。

台湾では優雅な演出より、にぎやかな演出の方が好まれたようです。

そしてストーリーも、アクセントもローカルなものになっていきました。

日本統治時代には、中国伝統の楽器の使用が禁止され、変わって西洋音楽が用いられたり、日本語での上演や日本風の衣装をまとった人形が登場するものもあったそうです。

1960年代には映画館で上演されるようになり、テレビ時代が到来するとテレビでも放送されるようになりました。

一時期は、テレビ放映の時間になると人々が街からいなくなるというくらいにみんなが観ていたそうです。

現在は、伝統的な布袋戲(ポテヒ)の劇団も観衆も大幅に減少してしまいましたが、それでもテレビ布袋戲(ポテヒ)は進化を遂げていて、台湾のポテヒ制作会社「霹靂國際多媒體股份有限公司(霹靂社)」が制作するテレビ布袋戲(ポテヒ)は今も根強い人気があります。

そして最近では、その人形の自然で滑らかな動きや演出はもちろん、“人形劇”という枠を超えるその特撮技術や、人形が“イケメン”、“美しい”と、日本をはじめ海外のアニメ好きや特撮ファンなどからも注目を集めています。

今回、日本で放送されている虚淵玄氏が脚本を手掛ける日台合作テレビ人形劇「Thunderbolt Fantasy」も第3期目と人気のシリーズとなっています。

伝統的な布袋戯(ポテヒ)は、全ての役を一人の声優が演じるのですが、この「Thunderbolt Fantasy」では一般のアニメ同様、役柄によって声優が担当しています。

そして今作は、悪役「異飄渺」をアニメ「鬼滅の刃」主人公、竈門炭治郎役の花江夏樹が、「萬軍破」をブラック・ジャック役で知られる大塚明夫がそれぞれ演じています。

テレビ人形劇では伝統的な布袋戯(ポテヒ)と演出部分で違う部分もありますが、人形とは思えないリアルで滑らかな動きや、しぐさ、表情といった布袋戲(ポテヒ)のベースの部分はテレビ人形劇でもしっかりと表現されています。

この「Thunderbolt Fantasy」は、ネットではメイキング映像も公開されていて、それを見るとCGやこま撮りではなく本当に人形を操って撮影しているのかと布袋戲(ポテヒ)の動きのすごさに改めて感心しますよ。

このテレビ人形劇を観たことがきっかけとなって台湾の伝統的な布袋戯(ポテヒ)にも興味を持つ人が増えることを期待しています。

関連のメッセージ